消防指令台 横須賀・三浦と共同運用へ 共産党は問題提起


消防指令台の共同運用について

葉山町は、2014年1月9日、議員懇談会において突然葉山町の消防指令台(119番通報を受信し、消防や救急などの災害出動を指令するところ)を横須賀市と三浦市が共同で運用している指令台に参加することが表明されました。

スケジュールとして、早くて2015年4月から運用開始するとの事で、2014年6月議会には参加するための議会議決を得たいとの事でした。

消防広域化について、三浦半島では、平成20年7月に、三浦半島4市1町で消防広域化検討委員会を設置し、検討を開始しました、その後、平成22年3月に鎌倉市が脱退。8月に3市1町の消防広域化検討結果報告書が議会に報告され、広域化は困難であるが、指令台の共同化についての検討を続けるとの報告がありました。

 さらに、平成23年11月から、逗子市・葉山町消防救急無線デジタル化に伴う共同実施設計検討会が設置され、その検討会では消防救急無線デジタル化に伴う共同実施設計の検討と指令台業務の共同運営についても検討されていましたが、13回の検討委員会が開催され、平成25年8月に「逗子市及び葉山町における消防指令業務の共同運用の検討結果について」では、「現時点での共同運用については見送りたいとの検討結果となった」と「報告」されています。このことについて議会には報告はありませんでした。そして、突然、5ヵ月後の1月9日に議会に横須賀・三浦との共同運用がされたのです。

一般的に行政間での広域的な取組を行う場合、準備・調査・協議・住民説明・パブリックコメントなどの手続きのために1年以上は必要だと思われます。

今回の事案については、1月9日の議員懇談会ではなんら資料が配布さないままの説明で、3月には関連の予算が計上され、住民説明会の開催やパブリックコメントの実施も全く考えていなかった。議会で質問されて計画する始末で、住民説明会については町の広報にも間に合わない、町内会の回覧板も大半は日程が過ぎてから回されるという有様で、慌てて準備したとの感はぬぐえません。

議会での対応も議員懇談会で要求した資料がなかなか出てこない。再度要求してやっと出てくる。最後の資料も委員会審査が終了してやっと出てくる。その資料についても、通報処理時間についての資料では、これまでの119番着信から出動までの時間が葉山町では2分45秒かかっているのに逗子市は1分32秒、三浦市は1分27秒、逗子市は平成25年12月から携帯電話の発信地表示システムを導入しています。三浦市は固定電話の発信地表示システムを導入済みでしたが、その差は1分20秒近くです。「1分1秒を争うんです」といいながら、この差の理由について明確な説明が行われていません。

さらに「1分1秒を争う」ならなぜこれまで「位置表示システム」を導入しなかったのか。ちなみに携帯電話、固定電話の表示システムは統合型として1500万円で導入できたものです。1500万円の予算投入で助けられた命もあったかもしれないということでしょうか。もしそうだとすれば、歴代の町政と現町政の怠慢といわざるをいえません。

さらに町長は当初「早ければ27年4月のスタート」と述べていたにもかかわらず、「何が何でも27年4月スタート」になってしまったとの感をぬぐえません。そのことによる、消防職員の事務処理における負担増は計り知れないものとなったことは想像に難くありません。

将来の消防広域化への布石では

 平成22年9月22日の全員協議会で報告された「三浦半島(3市1町)の消防の広域化検討結果報告書」の最後に「これまでの検討を踏まえた三浦半島地区としての方向性」では「消防指令業務の共同運用を将来を見据えた広域連携のファーストステップとして考えることが妥当といえる。」と明確に述べています。

 平成23年1月11日付け神奈川県知事宛「神奈川県消防広域化推進計画に対する三浦半島3誌1町の広域化検討結果について」には「将来の広域化を視野に、大きな意味での自治体間の広域連携手法として、指令業務の共同化に向けた検討を進める」としている。

 神奈川県市町村消防防災力強化支援事業費補助金交付要綱

第3条(補助対象事業)

(3)消防の広域化支援事業

イ 将来の広域化に向けた消防指令センター等共同整備事業

(横須賀市は平成24年度にこの補助金を交付されている。19,726千円)

補助金事業計画書では「理由書」で「この2市(横須賀市・三浦市)による指令業務共同化の成果は、今後の逗子市及び葉山町を含めた形での指令共同化、消防広域化の協議を強力に進める原動力になりうるものと思慮します。」また、「将来の広域化に向けた取組であることを表明すること」さらに「これらのステップを踏まえたうえで、将来の3市1町による消防広域化について議論を進めていきます。」となっている。

 町長は盛んに、「横須賀市長、三浦市長から広域化の話は出ていない」と述べていますが、私の「両市長から広域化の話は出ていないが、考えていないと言ったわけではないですね」との質問に「その通りです」と答えています。

 町長は将来の広域化については否定し続けているが、これらのことから、横須賀市・三浦市については将来の広域化について考えていると判断するのが妥当である。

なぜ広域化は問題か

私たちは、一切の広域行政に反対しているわけではないことをまず申し述べておきます。

しかし、日本の消防は、消防組織法で、消防の管理を行いその責任を負うのは市町村であると第6条で明記されてるとおり、日本の消防組織は各々の自治体が独立して構成しています。

火事や災害は容易に対応マニュアルを作ることができず、状況に応じた個別の対処をしなければなりません。

ある地域では木造民家が密集しているために飛び火を防ぐ工夫がより一層必要であるとか、この地域では台風が来ると地すべりの危険があるので早期の避難が必要だ、など状況によって対応策はさまざまです。

 このように、消防組織の持つノウハウはどこまでも実践的であることが求められるます。そのため、自治体住民の意見が議会を通じて反映されやすいよう、消防組織は各自治体が責任を持って管理・運営を行っています。

そのうえで、消防の広域化とは、複数の市町村の消防が合併して新たな消防組織になることで、その際に葉山町消防はなくなります。

また、全国の例を見ても広域化されることで小さな町村ほど消防職員の削減、車両や機材の削減が行われ、町村単位では消防力の低下につながっています。

仮に、横須賀市・三浦市・葉山町で消防広域化が行われた場合を想定しますと、これまでは特別応援協定で葉山町の救急車が2台とも出場している場合は、逗子市か横須賀市に救急車の出動依頼を行いますが、広域になった場合は葉山町も三浦も分署となります。葉山分署の2台の救急車が出払った場合、横須賀・三浦の15台が全て出払っていない限り逗子市に依頼することはありません。どんなに遠くても横須賀か三浦の分署からの出場となります。果たして、17台の救急車がいっせいに出場することがあるでしょうか。

また、方面隊を組織することも考えられますが、地理的に考えて葉山出張所、国際村出張所、平作出張所で一方面隊が組織されるであろうことが考えられますが、その際には葉山出張所の2台の救急車が出払っていた場合、長柄や堀内地区からの救急出動でも逗子に応援を頼むのではなく、国際村出張所か、平作出張所から救急車が出動することになります。葉山、国際村、平作の各出張所の救急車が出払って始めて、逗子市に出動依頼することになります。いくら同じ指令台にいるからといって長柄地域や堀内地域まで逗子市の救急車が早いか、横須賀市の救急車が早いか誰が考えても分かることではないでしょうか。

その上、葉山出張所の救急車が減らされることになれば最悪の状態も考えられます。

先行する県西2市5町広域化協議会では、大幅に職員数が減らされる計画となっていることからも箱根町は単独消防を選択しています。

町長も消防の広域化については疑問を呈しています。

疑問をもちながらなんらその対策や担保を考えていない。町長たるもの、近視眼的に目の前にある高機能な指令台の機器に目を奪われ、将来にわたり町民の生命財産を守るという立場を忘れているような感がしてならない。

なぜ逗子市とではないのか

経済圏や人口密集地が接する逗子市とは、平成22年度から13回にわたり消防指令台共同運用の「検討会」が開催されましたが、昨年8月に人的メリットがないことと、指令台の機種が違うということで解散しました。

横須賀市・三浦市の指令台に参加しても同様であるにもかかわらず、町長は「より高度な機器が手にはいる」としています。

しかし、消防の応援協定によって救急応援を受けている回数は昨年、横須賀市から7件、逗子市から38件と圧倒的に逗子市のお世話になっています。

議会で「逗子市の今後について」質問したところ、「他市のことなので分からない」の一言で済ませていますが、消防の応援協定の結果でも分かるとおり、将来、広域化された場合、逗子市が加わるのかどうかが葉山町にとって、最も関心を持たなければならないことではないでしょうか。

にもかかわらず、逗子市の意向も何もつかもうとしないということは、町民の生命財産を預かる立場の町長としての責任放棄ではないでしょうか。

町民の生命財産を守るのは機械ではなく人間では

葉山町の消防職員数は国の基準の50%を下回り、県下一番少ない人数でやりくりして、まともに有給休暇も取れない状況です。いくら高機能な機器を利用しても最前線で働くのは人間です。本当に町民の生命・財産を守ることを考えるのなら、早急に、少なくとも県平均並みの職員数へ増員を図るべきです。

横須賀市・三浦市・葉山町消防通信指令事務協議会規約について

この規約を議会が同意するかしないかが、消防指令台共同運用に同意するかどうかが問われています。

そもそも、対等平等の協議会参加であるならば「規約」について横須賀市、三浦市と白紙で検討しなおすのが当然であると考えますが、今回提案されたものは、これまで横須賀市、三浦市で運用してきた「規約」に「葉山町」の名前を追加しただけのものでした。

先行する県西2市5町広域化協議会、平成27年度より共同化を予定している茅ヶ崎市、寒川町。同じく平成27年度に共同化を予定している海老名市、座間市、綾瀬市。平成29年度に予定している平塚市、大磯町、二宮町の4団体の規約と比較するとその違いは明らかでした。

第1に、事務監査の規定が示されていないこと。第2に、脱退についての規定がないこと。ですが、町側の説明は、地方自治法に規定があるから必要ないとの事ですが、「規約に入れたらまずいのか」の問いに、「問題ない」との事です。なぜ他団体は入れているのか。

「自治法に載っているからいいのだ」ではなく誰が見てもわかりやすい規約にしていく努力がなされていないのではないか。自治法の抽象的な表現でなく具体的に規約に入れていけないことはありません。協議会そのものの体質がそこに表れるものです。

第3に、規約第16条2項についてであります。

規約第16条2項は(経費の支弁の方法)で、「関係市町が負担すべき額は、別に定める負担割合」とし、参考資料として提出されている「横須賀市・三浦市・葉山町消防通信指令事務協議会経費支弁に関する規程」の第4条で(その他の経費に関する負担割合)として、「消防指令センターの運用に必要な」経費の負担割合について規程しています。」

県内の4団体すべては運用経費は人口割りとなっています。ところが「横須賀市・三浦市・葉山町消防通信指令事務協議会」では設備費と同じで、単独整備割50%と人口割り50%で葉山町は13.7%の負担率になります。ところが県下他団体と同様の人口割りにすると6.6%の負担ですみます。このことについて葉山町が人口割とするよう主張したとの記録はまったく見当たりません。独立した自治体としての主張はなかったのでしょうか。ゴミ広域処理協議の際にも横須賀市は負担割合の20%について均等割を主張し小さな自治体に対して過大な負担を要求してきました。

ちなみに、逗子市と共同運営している逗用地域医療センターは利用者割を採用し3年ごとに見直しています。

いったん運用開始されてしまえば、よほどの重大事でも起きなければ規約の改正については不可能となります。運用経費が発生する前に「規程」の改正を申し入れ、他団体と同様の人口割に改正すべきであると考えます。そうでなければ、県下一不平等な費用負担を永久に負担することとなり、葉山町が県内他団体から嘲笑されることは明らかであります。

以上の理由から、将来に禍根を残さないためにも本規約案は撤回し、将来展望や近隣自治体の動向も勘案しながら町民とともに検討しなおすことを求め討論といたします。